小林秀雄『人生の鍛錬』より

“例えば、私は何かを欲する、欲するような気がしているのではたまらぬ。欲することが必然的に行為を生む様に、そういう風に欲する。つまり自分自身を信じているから欲する様に欲する。自分自身が先ず信じられるから、私は考え始める。そういう自覚を、いつも燃やしていなければならぬ必要を私は感じている。放って置けば火は消えるからだ。信仰は、私を救うか。私はこの自覚を不断に救い出すという事に努力しているだけである。”(147頁)