後藤正治 『リターンマッチ』

“人間、そう簡単に変わるものではない。そんなに簡単に変わってたまるか、というのが脇浜の体験的信条でもあった。第一、ボクシングを少々やったぐらいで、そうそう“いい子”になってもらってはオモロナイではないか。
 ただ脇浜は、自分自身の体験から、ひとつだけ確信できることがあった。
 それは、強くなれば他者に優しくなれる、ということである。本当に強ければむやみに腕力を振るうことはことはない。自分に自身があればつまらぬことにかかわることをやめるものだ。自分が荒んでいるから他者に当たるのである。自分が弱いが故により弱いものを苛める。弱いものがより弱い障害者を苛める。その構造こそ、脇浜が半生を懸けて闘ってきたものに他ならなかった。”(87頁)
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