詩がやってくるとき

 ヘソのうた 塚原直人

“このよのなかに うまれてこなければ
 よかった このおれが うまれてしまった
 という まちがいの きずあとだ
 ほくろのようにくっついて
 しぬまで もうなおらない きずあとだ。
 おまえが おおぜい のなかへ おまえを
 なくしそうになったときの
 めじるしにするんだぞ。
 とうのむかしに しんでしまった
 おかあさんが このこはわたしがうんだ
 わたしのこどもです と
 ゆびをさしているのは たしかにここだ。
 おれが じぶんであることをかくすには
 ほかのおれ のなかにかくれることだ
 このいちはいい せなかにかくすよりも
 どうかくれたかを じぶんで たしかめる
  にはいいばしょだ。
 いきていることをゆるす と
 かみさまがおれに おしえてくれた
 ひとつのぼいん いのちのまんなかには
 このきょうかしょが なければいかん。
 おへそは こどく のようにかわいている
 ほんとうのことがいつもいえるように と
 ほしぶどうのように かわいている
 じっくりと あじおうがいい。
 あなたはしっているか ぐんしゅうのなかの
 じぶんのおへその ありか こっそりと
 さわってみるがいい あなたのじぶんが
 めをさます。”


 ハックル・ベリーフィンと旅に出たい気分だ。