詩がやってくるとき

 今撃とうとする鳥に 安永稔和 
“なぜ
 数多くの
 たくみに飛ぶ
 鳥のなかから
 おまえをえらび
 なっとくできぬまま
 おまえをうち殺すのか。
 なぜかならず
 ひとりのおまえをえらぶのか。
 なぜかならず
 ひとりのおまえを殺すのか。
 数多くの枝を
 手をふれるまま
 折りとり
 裂きとる
 ちょうどそのまま
 なぜ
 いっそ
 数多くのおまえをえらばないか。
 いっそう
 数多くのおまえを殺さないか。

 えらばれたものはおまえ
 おまえでなければならないか。
 ぜひとも私
 私はえらばなければならないか。
 なぜ
 なぜおまえは
 死体でなければならないか。
 なぜ
 なにゆえに私は
 凶器でなければならないか。

 岩が
 岩であり
 岩であるゆえ
 みずから砕けるはいい。
 河が
 河であれば
 丘陵との合意なく
 みずから方向を変えるも
 ずばらしいことだ。
 獣が
 獣である時
 獣はもっとも獣だ。

 おまえはえらばれるもの。
 そしてうち殺されるもの。
 私はえらぶもの。
 うち殺すもの。
 鳥は鳥だ。
 私は私だ。
 
 しかも。
 だから私はだずねる。
 木立のきれめから
 欲情にあえぎ
 私がおまえを
 えらぶこと、
 なっとくできぬまま
 夜の真昼
 欲情にあえぎ
 おまえが私に
 うち殺されること、
 これは
 かならず
 ずばらしいことであるか。”