ジェームス・エドワード


 アラスカ、デーリング村に住むジェームス・エドワード君。2005年当時、5歳くらいだったろうか。エスキモーの村では珍しいことではないのだけれど、ジェームスは養子として今の家族に引き取られた。
 養子だったからなのか、彼の雰囲気からなのか、ジェームスはよく周りの子どもたちからイジメられていた。ジェームスはイヤなことをされても怯むことなく「Fucking Asshole!!」と言って、手近にある石や砂を相手にぶちまけていた。
 歳が上で、身体も大きな子どもたちにひどくイジメられていたとき、ジェームスはいつものようにやり返しはしたものの、あまりの理不尽さに悔しくなったのか、物置の暗闇の中へ歩いていって、独り、声を殺して泣いていた。
 普通の5歳児なら外の明るいとこでおもいっきり泣くだろうに。泣いたら大人の誰かが助けに来てくれて、涙をふいてくれたり頭を撫でたりして慰めてくれることを体験として知っているだろうに。でも、ジェームスはそうじゃなかった。この地に生まれてから5年。泣いても誰も助けてはくれないことを知り、暗闇が哀しみを慰めてくれることを知ってしまっているんだろう。

 翌年、デーリング村を再訪し「ジェームスは何歳になったの?」って聞いたら、「だからこれ!」と言って指で教えてくれたのだけれど、何回聞いても指は3本しか立っていなかった。去年も3本だったような・・・。 最近、ジェームスのことを思い出す。ジェームスは立派だった。
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