自我滅却→無私→生命そのもの、宇宙そのものの流れへ

小林秀雄さん
“並外れた意識家でありながら、果敢な実行家でもある様な人、実行するとは意識を殺すことである事を、はっきり知った実行家、そういう人は、まことに稀れだし、一番魅力ある実行家と思える。考える事が不得手で、従ってきらいで、止むを得ず実行家になっている種類の人が一番多いのだが、また、そういう実行家が、如何にも実行家らしい実行家の風をしてみせるものだ。”
“実行家として成功する人は、自己を押し通す人、強く自己を主張する人と見られ勝ちだが、実は、反対に、彼には一種の無私がある。空想は孤独でも出来るが、実行は社会的なものである。有能な実行家は、いつも自己主張より物の動きの方を尊重しているものだ。現実の新しい動きが看破されれば、直ちに古い解釈や知識を捨てる用意のある人だ。物の動きに順じて自己を日に新たにするとは一種の無私である。”(『無私の精神』より、新潮社『人生の鍛錬』193頁より孫引き)